「暑い〜」
 だら〜とテーブルに突っ伏しながら不満を口にする蒼氷(ソウヒ)
 確かに暑いが、そんなに声を大にして言われると見ている方が暑苦しく感じる。
「暑いのはいつもだろうが」
 今日は特別気温が高い気がする。
「それにしても、どうしてこの識者の館は暑いんですか?」
 白雲(シユク)に言われて、緋燿(ヒヨウ)も気付いた。
 ここには季節なんてないんじゃないだろうか……
 少なくとも、緋燿(ヒヨウ)がここ以外で暑いと感じた事はない。
「ここは特異点ですからね」
 緋燿(ヒヨウ)が後ろを向くと碧風(ヘキフ)がいた。
 いつも誰かと話をしているといつの間にかいる。
 それが碧風(ヘキフ)だ。
「特異点が何か関係あるんですか?」
「気温が上がる事はあっても氷点下になったりしないでしょう?」
 暑くはなっても、寒くはならない。
「気温が上昇するのは一定周期でこの特異点の力がかなり高くなるときがあるからです」
「だから暑さはどうにもならないんだよ〜」
 ぐてーっとしている蒼氷(ソウヒ)
 蒼氷(ソウヒ)はここから動けないので暑さにも耐えなければならない。
 だが見る限りとても忍耐力があるようには見えない。
「暑い〜」
 余計に暑くなるから連呼するのをやめて欲しかった。
緋燿(ヒヨウ)
 蒼氷(ソウヒ)に呼ばれる。
 非常に嫌な予感がしたが、無視するわけにはいかない。
 こんなんでも上司だ。
「なんですか?」
 観念して返事をする。
「何か冷たいもの持ってきて」
 緋燿(ヒヨウ)は少し安心した。
 いつものように無理難題を押し付けられるのではないかと思っていたが、今日はそうでもなかった。
「じゃあシャーベットでも持ってくるよ」
「何味?」
「――…………確か…………白ワイン……」
 お酒大好きな蒼氷(ソウヒ)向きのシャベットだ。
「早く持ってきて」
 予想通り飛びついてきた。
「はいはい」



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2007年7月14日に日記に掲載したもの。
話としては碧風(ヘキフ)が識者の館に住み着いてからかなり後で、[外伝:知識と生命の神の仕事]より後。
[第二十三話:碧風(ヘキフ)編4:見慣れた光景]と[第二十七話:気ままな上司編2:射抜く眼差し]の間。
識者の館は周期的に猛暑になります。
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