ニコニコとした白雲(シユク)さんが目の前にいた。
「一緒に頑張りましょうね」
 いつもの通りやる気だけは一人前だ。
 ただ、それが反映されないだけで……
 俺はとりあえず買ってきた白いペンキを白雲(シユク)さんに渡した。
「とりあえず劣化が少なく、壁の修繕の必要のない北の外壁にそれ塗ってください」
「北の壁ですね。わかりました」
 そして意気揚々とペンキと刷毛を持っていく白雲(シユク)さん。
 ……………………心配だ。
 だが、俺はそんな思いをしながらも何もしないわけにはいかない。
 白雲(シユク)さんにはおそらく無理であろう壁の修繕をしなければならないからだ。
 そう思って罅の入っている個所を探して罅を塞いで――
「うわぁああああぁああ!!」
 白雲(シユク)さんの悲鳴が響く。
 一体何が……何をしたんだ白雲(シユク)さん!
 あまり酷い事ではないようにと祈りつつ俺は白雲(シユク)さんの悲鳴が聞こえた場所に向かった。
 そこには………………
「う……うう…………」
 ペンキのバケツを頭からかぶった白雲(シユク)さんがいた。
 無論ペンキ塗れなのだが、元から白い服装だったため近くで見ないとよくわからない。
「ごめんなさい。ちょっとすべってしまって――」
 とりあえず本人に怪我はないようだ。
 …………ペンキ塗れではあるが。
「それにペンキを無駄にしてしまって――」
 ペンキの事は心配ない。
 こんなことはきっと起こるだろうと思ってかなり余分に…………必要な分の二倍ほど買ってある。
白雲(シユク)さん。とりあえず頭に付いているペンキだけでも落とさないと大変なことになりますよ」
「あ、そうだね」
 ちょっとシャワー浴びてくるねと白雲(シユク)さんは頭を下げて走り去った。
「はぁ……」
 初日からこれとは……
 …………ホント……いつになったら終わるかわからないよな…………壁の修繕。



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2008年6月14日に日記に掲載したもの。
[第十六話:白雲(シユク)編2:傷ついた外壁]のすぐ後の話。
これから壁の修繕が終わるまで緋燿(ヒヨウ)の苦労は終わらない。
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