緋燿(ヒヨウ)が来てからしばらくが経った。
 でもすぐに修行というわけではない。
 どの程度の能力があるのか見定めないとね。
 何しろ僕は彼の事全く知らないし。
 ――と、いうわけで家事をいろいろやってもらった。
 それなりに家事はこなせるようだ。
 泣きそうになりながらも仕事をこなしている。
 理由は簡単。
 死神としての仕事もこなさなければならないからだ。
 まあ、それはしょうがないよね。
 ここじゃ知識を詰め込むことは出来ても実技は出来ないもん。
 だって僕は知識と生命の神で死神業務に関与しているわけじゃないし。
 そのためにここでの修業とは別に死神業もこなさなければならない。
 でないとAランクに昇格するための修行にならないからね。
 何しろ彼の学力はデータを見る限り壊滅的だ。
 これ、僕がそのうちみっちり教え込まないといけないわけ?
 結構大変そうなんだけど……
 もうちょっと何とかならないものだろうか?
 そう思いながら階段を下りた。
緋燿(ヒヨウ)、掃除終わった?」
「はい」
「じゃあ、午後のティータイム用に紅茶とお茶菓子用意しておいて」
 彼がいくら公務官だからってやらなくていいという事はないだろうしね。
 偉くなればそのうち茶汲みもしないといけなくなるよ。
 だってどう見ても彼は大幹部にはなれそうにないもん。
 一生こき使われて終わるタイプだよね、アレは。
 そう思いながら僕は階段を上った。
 いつものようにテラスに出る。
 ここで本を読むのは日課だ。
 僕はここから出られない。
 ここにいることが存在意義。
 本がないと、ぶっちゃけ暇だ。
 本を読むのはいい暇つぶしになるからね。
 それ以外にやる事はない。
 今の僕には何も出来ないから――