テラスで寛いでいると、下から物凄い力を感じた。
 これは間違いなく、神術を使った気配。
 
 しかし、この館で無闇に神術を使う者はいない。
 白雲(シユク)は使えるけど、使ったりしない。
 緋燿(ヒヨウ)はそもそも魂を運ぶ神術しか使えない。
 では一体誰が?
 
 僕は急いで下に降りた。
 そしてキッチンに駆け込む。
 
 
「僕の家で勝手に神術使う愚者は誰だ!」
 
 
 そう言い放ってから気付く。
 見慣れた姿に。
 
碧風(ヘキフ)!」
 
蒼氷(ソウヒ)
「久しぶり〜、いきなりどうしたの?」
蒼氷(ソウヒ)は相変わらずちっこいですね〜」
 
 相変わらずのようだ。
 
「ふふふ、余計なお世話だ」
 でも、本当に久しぶりだ。
蒼氷(ソウヒ)様のお知り合いなんですか?」
 碧風(ヘキフ)に気を遣ってか、敬語だ。
碧風(ヘキフ)と僕は幼馴染なんだ」
 もう随分と会っていないが。
 
蒼氷(ソウヒ)、私をしばらくここに匿ってくれませんか?」
 
 ニッコリと笑顔でいきなりそう切り出した。
「いいよ」
 僕にとっては何の不都合もないので二つ返事だ。
 
「……あの、お仕事は?」
 
 後ろから緋燿(ヒヨウ)が尤もな疑問を投げかける。
 だが――
 
「わかってないですねぇ。偶にサボりたくなる時があるんですよ」
 
 予想通りの答えだ。
「これからしばらくの間、よろしくお願いしますね」
「こちらこそ」
 碧風(ヘキフ)が来てくれたのは大抵の問題は片付くはずだ。
 なんせの僕には力が使えないからね。
 それにいろいろ話も聞ける。
 僕はさっそく碧風(ヘキフ)とテラスに向かった。
 碧風(ヘキフ)は僕と違って酒に弱いので紅茶だ。
 今日の飲み物はお誂え向きにロイヤルミルクティー。
 久しぶりに楽しい時間が過ごせそうだった。