カルステンはもう諦めていた。
決して人と触れ合うことは出来ないのだと。
だが、そんなカルステンに唯一触ることのできるラインハルトはある事に気付く。
それは、カルステンがすり抜ける時とすり抜けない時があったからだ。

カルは幽霊だが、物に触れる。
無論すり抜けることもできる。
それは、人にも言える。
ホルが触ろうとして、すり抜けた。
「触れないな」
「幽霊だから」
カルもどことなく寂しそうだ。
「でも、ライン様は触れましたよね?」
……………………
言われてみればそうだ。
「でもボクは触れない」
ぶんぶん手を振るクルト。
でも、しっかりと視認できる彼から腕が生えているように見えるからやめて欲しい。
ヒルトもティアもアルもエアも触れない。
「イリーは?」
そう声をかけると恐る恐る触れようとした。
結果、すり抜けた。
ハインとエリーもすり抜けた。
「でも、少し抵抗が……」
「イレーネは?」
「イレーネは水に手を入れたみたいに感じた」
「ああ、言われてみれば、ちょっと重いかも」
クルトもそう言い始めた。
「私は何も感じませんでしたね」
ああ、なるほど。
僕は共通点を見つけた。
「魔力があるほど抵抗があるというか触れそうなのか」
僕が触れるのは魔力がズバ抜けて高いからだろう。
だから魔力が高いエリーやイリーの方が抵抗がある。
ハインは強いけど魔力はそこまで高いわけじゃないから抵抗が低いんだろう。
ん……?
「そういえば、物に触る時はどうしてるの?」
すり抜けるときとすり抜けない時がある。
そう思って尋ねると――
「気合い」
それでどうにかなるものなのか……
ある意味感心する。
ふむ……気合い……気合……――
それって――
もしかして――
僕はガシッっとカルの両手を握り締めた。
「ライン?」
不思議そうな顔をしているカル。
手に意識を集中させる。
しばらくそれを続けるとさすがに疲れる。
「あれ……」
カルが異変に気がついた。
僕が触っても分からない。
というわけで一番魔力が……というか魔力の欠片も無いアルに試してもらうことにする。
「アル、触ってみて」
「オレ? うん、わかった」
素直なアルは何も尋ねることなくカルに……触った。
そう、触った。
「すごーい! どうして! 触れるよ?」
ペタペタと触り続けるアル。
「……魔力…………魔力を分けてあげたの?」
この中で一番最初にそれに気がついたのはやはりクルトだった。
「そう。気合いでなんとかなるということ……つまり、知らずうちに魔力を使って物に触っていたということだ」
だから魔力を分けた。
そうすることで、誰にでも触れるようになると思ったから。
「ちゃんと触れる」
イリーもカルに触り始めた。
「これで皆に触れるね」
言外に寂しくないよと言えば…………カルは泣きそうな顔で笑った。
「ありがとう」
「どういたしまして」
「本当に――――ありがとう」
とても、嬉しそうだった。
少しでも、心が軽くなってくれればいいと、思う。
寂しいのは……辛いはずだから。
僕は皆と触れ合えるようになって嬉しそうなカルと皆を見つめながらそう思った。