今日は珍しく外に来ている。
 俺が外に行くのが珍しいわけではなく、蒼氷(ソウヒ)が外に出るのが、だ。
 基本的に蒼氷(ソウヒ)は館から出ない。
 それは蒼氷(ソウヒ)の役割と生命維持のために必要なことだ。
 だから蒼氷(ソウヒ)は外に出ない。
 では何故、今日は外に出たのか。
 それは桜愛(ササネ)様が非番だからだった。
 休みの桜愛(ササネ)様が蒼氷(ソウヒ)を連れ出そうとしたのだ。
 ついでに碧風(ヘキフ)様や白雲(シユク)さん、そして俺もついて行くことになった。
 大勢の方が楽しいでしょう? と、ニッコリ言われたら断れない……



 そんなこんなで目的地までの移動中。
「そう言えば蒼氷(ソウヒ)ってどれ位外出していられるんだ?」
「僕? そうだなぁ〜……」
 考え込む蒼氷(ソウヒ)
「……う〜ん……今のこの状態じゃ、三日が限度かなぁ?」
 やはりあまり長い時間外出していられないようだ。
「これでも昔よりは随分マシになった方ですね」
「そうですわね……昔の蒼氷(ソウヒ)様は、ほとんど寝てばかりでしたから……」
「仕方のないことだけどね……」
 苦笑する蒼氷(ソウヒ)
 一万年以上立っているのに、外で活動できるのはたった三日……
 それだけ夜曇(ヤクモ)という存在の封印の器という役は楽ではないということだろう。



 しばらくして目的地に着いた。
 そこには一つの神木があった。
 結構立派だ。
「立派な神木ですね」
「そうでしょう?」
 なんとなく桜愛(ササネ)様が嬉しそうだ。
 ここは識者の館からそんなに離れていない場所にある。
「ここって何か思い出でもあるんですか?」
「はい」
 それはそれは嬉しそうだ。
「ここは蒼氷(ソウヒ)様との婚約が決まってから初めて蒼氷(ソウヒ)様に連れてきてもらった思い出の場所です」
「そんな事もあったねぇ〜」
 そういえばこの二人婚約してるんだったな。
「二人はいつ婚約を?」
「僕が断罪と執行の神になった時だから……もう一万五千年くらい前かなぁ?」
 結構前からだな。
「二人の婚約は夜曇(ヤクモ)が現れる前に決まったことですからね」
 ……へぇー。
「わたくしは……いつまでも蒼氷(ソウヒ)様をお慕い申し上げていますわ」
 その言葉を聞いた時、蒼氷(ソウヒ)は苦い表情をした。
 …………蒼氷(ソウヒ)
 だが、その理由を聞くことは出来なかった。
 ……とても聞けるような状況ではない。
 それを聞いてしまう事は今の空気を壊してしまいそうだったから……