俺がここに来てから五年が経った。
 ここもずいぶんにぎやかになったと思う。
 俺がここに来た時は蒼氷(ソウヒ)しかいなかった。
 そこに白雲(シユク)さんが来て、碧風(ヘキフ)様が来て、桜愛(ササネ)様が来た。
 ここに初めて来た時はこんな風になるとは思わなかった。
 今日は全員テラスにいる。
 紅茶とケーキを持ってテラスに向かった。
 そして皆に配る。
「あの……前から少し気になっていたのですが――」
 桜愛(ササネ)様がおずおずと言った。
 その視線は何故か俺を向いている。
「えっと……何か?」
蒼氷(ソウヒ)様がいつも緋燿(ヒヨウ)さんに修行修行と仰られているでしょう? それに緋燿(ヒヨウ)さんは死神です。どうしてこちらにいらっしゃるのですか?」
 …………まぁ……もっともな疑問だろう。
緋燿(ヒヨウ)っていくつだっけ?」
「えっと……今年で7975歳です」
「まぁ……」
「ほぉ……」
 それを聞いた桜愛(ササネ)様と碧風(ヘキフ)様は同時に声を上げた。
「ではもうAランクになられていてもよろしい年齢ではないですか?」
「そうですね。基本的にBランク試験は1000歳から、Aランク試験は5000歳から、Sランク試験は10000歳から、SSランク試験は30000歳から、SSSランク試験は50000歳から受けられます。
 でも基本的に千年以内には全員受かっているのが通例ですね」
 ぐさっと言葉が刺さった。
緋燿(ヒヨウ)はペーパーテストが駄目駄目な落ちこぼれだからね」
 蒼氷(ソウヒ)の言葉にはまるで容赦がない。
「実技は合格ラインなのにペーパーテストが駄目だから受かんないんだよ」
「まぁ……だから修行ですのね」
「そうなんですか。全く疑問に思ってなかったですね」
緋燿(ヒヨウ)、言ってくれればボクが教えてあげますよ。ボク、勉強だけは得意ですから」
 皆の視線が痛い……痛すぎる!
「わかりました……そういう理由でここにいらしていたなんて……気づいてあげられなくて申し訳なかったです」
 何故か拳を握りしめ立ち上がる碧風(ヘキフ)様。
 …………
 ……………………
 ………………………………なんか……嫌な予感が――
「私がみっちりかっちりたっぷりばっちりと教えて差し上げます」
 力いっぱい言い切られた。
「覚悟してください」
 …………!!
 俺は顔が引きつるのを止められなかった。
「良かったね、緋燿(ヒヨウ)碧風(ヘキフ)に任せればバッチリだよ」
「ボクもお手伝いします」
 確かに、それが目的だった…………だったが……不安が拭えないのはやはり、碧風(ヘキフ)様の性格に起因するのだろう。