コンコン。
 今日もまた誰かがやってきたようだ。
「はい」
 そう返事をして扉を開けると――
「こんにちは」
 全く見覚えのない女性がいた。
 青い翼を持っているところを見る限りAランクだ。
 そして徽章は――葉だ。
 と、いうことは……
碧風(ヘキフ)様に、客?」
「あ、はいそうです」
 これはやっぱり……
「仕事をしない上司を連れ戻しに?」
「――――はい、そうです」
 少し気まずげに答えた。
 碧風(ヘキフ)様もここに来てから結構経つよな……
 その間の仕事を誰が処理しているのか知らないが、結構まずいはずだ。
 よく今まで誰も何も言ってこなかったと思う。
碧風(ヘキフ)様は今日もテラスにいるだろう。こちらへ」
「はい」
 こうしてテラスに向かった。




碧風(ヘキフ)様〜」
「何です――」
 返事をしながらこちらを振り向いた瞬間、露骨に嫌そうな顔をした。
光黄(ミツキ)(みつき)……」
「はい、碧風(ヘキフ)様。お久しぶりです」
「何しに来たんですか?」
「勿論の仕事をしていただくために……」
「いや」
 一言で斬って捨てた。
「ですが、お仕事が溜まってきていると、藍水(アイナ)様が――」
「いや」
 ぷいっと横を向いた。
 それを見ていた蒼氷(ソウヒ)がため息を吐いた。
「ふう……何でよりによって粛神じゃなくてただの武神がくるかな?」
 説得には全く向かないだろうにと告げる。
 確かに……押しには弱そうだ。
「でも、藍水(アイナ)様が――」
「帰りません」
 強固に嫌がる碧風(ヘキフ)様を連れて行く事は彼女には出来なかった。
 明らかに人選ミスだと思う。