蒼氷(ソウヒ)が倒れてからしばらくが過ぎた。
 どうして倒れたのか……俺にはわからない。
 でも、よくないことが起きているような気がした。
碧風(ヘキフ)様」
 暗い表情をしている碧風(ヘキフ)様。
蒼氷(ソウヒ)は……蒼氷(ソウヒ)様は…………どうして――」
「…………わかりません……こればかりは……私では――」

 バン!!

碧風(ヘキフ)様! 蒼氷(ソウヒ)様が!」
蒼氷(ソウヒ)に何か!?」
「意識が戻られて、でも……」
 目が覚めたというのに……白雲(シユク)さんの表情は暗い。
「早く!」
 話す間も惜しいと言った感じで白雲(シユク)さんに碧風(ヘキフ)様は引き摺られていく。
 俺も二人について行った。
 そこには――
「これは――」
 一体……これは…………なんだ?
緋燿(ヒヨウ)下がって!!」
 そう言って碧風(ヘキフ)様は俺の前に立ち塞がった。
「へ……碧風(ヘキフ)様?」
白雲(シユク)、君は平気ですか?」
「ボクはなんとか大丈夫です。でも――」

 黒い霧のようなものに包まれ、苦しそうにしている蒼氷(ソウヒ)……
 一体……

夜曇(ヤクモ)の封印が……外れかけてるなんて――!」

 …………え?

 今……なんて――
 そう思っていると、苦しそうな蒼氷(ソウヒ)の声がした。

「に……にげ………………かね……ゆ…………みん……な…………に――」

蒼氷(ソウヒ)!!」
 黒い霧が溢れた。
緋燿(ヒヨウ)こっちです!」
 白雲(シユク)さんに手を引っ張られ訳も分からないまま外に引き摺られた。
 外に出た瞬間……それは起こった。

 黒い霧が空に向かって解き放たれた。

「な、何が――」
「禍神・夜曇(ヤクモ)の封印が弱まり、その力は蒼氷(ソウヒ)様という封印の枷を無理やり外してしまったんです」
 まさか……それが最近蒼氷(ソウヒ)様の体調が悪かった理由――
「あれは、あの黒い霧は禍神・夜曇(ヤクモ)。そう時間が立たないうちに黒い竜の姿に変わります……」
 あれが……かつて…………たくさんの神を殺し、そして倒す事の出来なかった禍神――
緋燿(ヒヨウ)! 今すぐ管理局の銀生(カネユ)様を呼んできてください!! ボクはこれから転生部と制裁部に行きます!」

 中にいる碧風(ヘキフ)様と蒼氷(ソウヒ)が心配だった。
 特に、封印を破られた蒼氷(ソウヒ)は……蒼氷(ソウヒ)様はどうなったのか――
 だが、そんなことを考えている余裕なんてなかった。
 白雲(シユク)さんの言うとおりにするのが最善だと解っていたから。

 俺は白雲(シユク)さんの言うとおり管理局に急いだ。