「う〜ん……」
 俺は少し気になっていることがあった。
 白雲(シユク)さんの年齢は約二万八千七百歳。
 年齢に見合っていてちゃんとSランクだ。
 白雲(シユク)さんはSランクの政務官だから本来なら文神ではなく采神のはずだ。
 何故、文神なのだろうか?
 この疑問は流石に白雲(シユク)さんに直接聞くのは憚られる。
 こういう質問は蒼氷(ソウヒ)に聞くに限る。
 俺はテラスで寛いでいる蒼氷(ソウヒ)の所に行った。
蒼氷(ソウヒ)
「何?」
「前から少し気になっていることがあったんだが……」
「気になっていること?」
 蒼氷(ソウヒ)は読んでいた本をテーブルの上に置いた。
「ああ、白雲(シユク)さんの事なんだが……」
白雲(シユク)がどうかしたの?」
「――なんで白雲(シユク)さんは文神なんだ?」
「ああ、そのこと」
 蒼氷(ソウヒ)はテーブルに頬杖をついた。
「政務官と警務官はランクによって名前と職務が違うもんね〜」
「ああ。Cランクが吏神と看神、Bランクが仕神と剣神、Aランクが文神と武神、Sランク以上が采神と闘神だろう」
「うん、そうだね」
 それなのに何故――
白雲(シユク)を見ててわからないかなぁ〜?」
 白雲(シユク)さんを?
白雲(シユク)のドジっぷりを見ててわからない?」
「ドジって…………まさか――」
「そう。采神は政務官の最高幹部に位置している。だから重要な仕事を任されるんだよね。
 制裁部は人手が足りてない上にとても重要な部署。
 書類をダメにされるわけにはいかない。
 だからしかたなく文神という地位になってるんだよ」
 そうなのか。
白雲(シユク)もあと千三百年もすればSSランクの昇格試験が受けられるようになるんだよね」
「そうだな」
白雲(シユク)はドジだけど頭は良いし優秀なんだよね」
 そうなのか……ドジっぷりが勝ち過ぎていてあまりそうは見えないな。
「でもSSランクになったら流石に文神のままじゃいられないからね〜」
 采神のSSランクと言ったら最高幹部に位置する。
 Sランクの采神にいろいろ指示を出す立場だ。
 確かに書類をダメにする幹部は――
白雲(シユク)なら試験は軽くパス出来るだろうけど――」
 そこで蒼氷(ソウヒ)は溜め息を吐いた。
「今の内に采神の仕事が出来るようにここで修行中なんだよ」
 白雲(シユク)さんが……
「今のところ成果はいま一つだけどね〜」
 …………というか、ここでの仕事は修行になるのか?
「そうそう、緋燿(ヒヨウ)も人のこと言えないんだからがんばりなよ」
「うぐっ――」
 蒼氷(ソウヒ)の冷たい一言が胸に刺さった。
 そうだ……俺も――
「試験受からない緋燿(ヒヨウ)の方が余程性質が悪いってわかってる?」
「うう……」
 俺は全く言い返せなかった。
 確かに俺がここにいる理由は――


 溜め息が出た。