
庭の掃除をしていると、羽音が聞こえた。
誰か来たのか?
そう思って視線を上げると――
ふわりと、銀色の髪をたなびかせた色黒の女性が降り立った。
それを見て俺は硬まった。
何故なら、彼女は金色の翼を持っていたから――
この世界にたった四人しかいない……至高四神と呼ばれる神……
その最後の一人は管理局を治める、統轄と徳性の神・
その証拠に彼女のつけている徽章はユリ≠セ。
「始めまして、ワタクシは
逆らうことを許さない、統治者の言葉……
「はい、こちらです」
俺は箒を壁に立てかけて
「
「お久しぶりです、
「管理局の統括者がこんな辺境の地まで来るなんて、どういうつもり?」
しょっぱなからケンカ腰だ。
「ワタクシがここにいる理由がおわかりにならないと、そうおっしゃいますか?」
空気が冷たい。
局地的ブリザードが……
凍るような眼差しで射抜く
いつものほほんと笑っている
「君がここに来たという事は、あの話ですか」
「はい、その通りです」
「まだ、諦めていないわけ?」
「当然です」
「やらない、とはっきりキッパリ言ったハズだよね?」
「はい。そう返答したと報告を受けています」
「なら、何故?」
「アナタはこの世界になくてはならないお方です。このような場所で終わっていいお人ではありません」
「そんなこと、僕には関係ない」
「そういうわけには参りません」
「もう放っておいて!!」
俺はビクリと肩を竦めた。
「もう昔のようには出来ない! もう戻れないんだよ!! それは貴女が一番よく解っているはずだ!」
「しかしっ――」
「僕にはもう神術を使えるだけの力もないのに!」
「それでも、ワタクシはアナタにやって欲しい。文献を、歴史を管理する者を――」
「断る!」
「
それを聞いていた
そして背中をおしてテラスから出る。
「へ、
「今は近づかない方がいい。あの話になるとあの二人長いから」
それはどちらも自分の意見を曲げないということだろう。
確かに、どちらも意志はしっかりしてそうだった。
そして、二人の話し合いという名の怒鳴り合いは深夜まで続くことになるとは、思ってもみなかった。