今日も光黄(ミツキ)さんが碧風(ヘキフ)様を連れ戻しにきた。
 相変わらず本気で連れ戻す気があるのか分からない。
 そう思いながらテラスにいる碧風(ヘキフ)様の所に案内した。

「満たされない」

 物凄くダルそうにそういったのは蒼氷(ソウヒ)だ。
 べたーっとテーブルに突っ伏している。
蒼氷(ソウヒ)?」
 いきなり意味不明なことを言い始めた。
 どうかしたのか?
 そして俺達を見つけた碧風(ヘキフ)様がスタスタとこちらに向かって歩いてきた。
「今から適当に書物をあさってきてください」
 そう言ってぐいぐいと背中を押された。
「へ?」
光黄(ミツキ)も一緒に行ってください。いいですね?」
 有無も言わさないとはまさにこのことだった。
 俺達はそのままテラスを追い出された。

「一体なんなんだ?」

 疑問ばかりが浮かぶ。
 当然、蒼氷(ソウヒ)のことをよく知らない光黄(ミツキ)さんがわかるわけもなく……
 呆然としているところに白雲(シユク)さんが現れた。
「どうかしましたか?」
「あ、それが――」

 事情を話すと白雲(シユク)さんは納得したようだった。

「それでは仕方がありませんね」
 何が仕方ないのか?
蒼氷(ソウヒ)様はここから動けません。神力がほとんどないために仕事さえ満足に出来ない。
 だからこそ、蒼氷(ソウヒ)様はここに存在することだけを望んでいるのですが……
 やはり何もしていないと暇なんです。
 ここでは娯楽はありませんから」

 ああ、確かに――

 ここには書物以外には何もない。
「今は話し相手に碧風(ヘキフ)様がいるからいいですが……やはり唐突に何もすることがなくなってしまったりするんですよ」
 それが、今――
「では碧風(ヘキフ)様に言われたとおりに書物でも探しに行きましょう」
「行くってどこへ?」
「それは勿論、蒼氷(ソウヒ)様愛用の書店です」
 そんなものがあったのか……
 そう思いながらも俺達は白雲(シユク)さんに引っ張られるようにしてその書店に向かった。

 そこであり得ないほど本を買い込んで持って帰るのに死にそうになった。
 だが、意外と怪力の白雲(シユク)さんだけでなく、女性の光黄(ミツキ)さんも平然としていて泣きたくなった。
 やはり、警務官は体力が違うのだろうか……?