
「…………らら……ら〜…………らら……――」
いつものように館の掃除をしているとどこからともなく小さな声が聞こえた。
なんだろう……
この館で小さな声を出すような人物が居たか?
はっきり言って
そして思い至る。
そう言えば該当する人物がいた。
最近ここにやって来た
彼女ならありうる。
なんせ
そして声をよく聞いてみると旋律があるように思える。
歌でも歌ってるのか?
気になったので声のする方に向かって歩いた。
途中で
「今日はテラスじゃないのか」
「ああ、うん……」
するとバツの悪そうな顔をした。
「今日はちょっと体調がすぐれなくてね……」
「テラスには制裁の扉があるでしょう? あれは強い神力を持っているので側に行くと直に影響を受けてしまうんです」
「だからちょっと体調が優れない時はテラスと地下には近寄らないようにしてる」
「地下?」
「あそこにある書物は強い力を持ったモノが多いですから」
同じような事が起こるのか……
でも――
「神って病気……しないよな?」
なんで
「僕は封印している
「あっ――」
「
「僕は封印の器だからね」
偶に忘れそうになる……
この人がとてつもないモノを封じていることを……
普段はそんなことおくびにも出さないから――
「――で、
「あ? ああ……なんかテラスから歌声が聞こえて――」
「歌声?」
「ああ、確かに聞こえますね」
「
「じゃ、行ってみましょう」
そう言って
テラスに行くと確かに
「
そして手を振りながらおもむろに声をかける。
「
「あら?
「
「まぁ、ごめんなさい」
そう言って
「どうかなさいました?」
「歌声が聞こえたから」
「まぁ! お聞きになられていたのですか? 恥ずかしいです」
そう言ってもじもじする。
……乙女だ。
「なんていう曲なんですか?」
「それが……よく覚えていませんの……」
昔、
記憶は曖昧になってしまったが、なんとなく思い出した旋律を適当に歌っているらしい。
「でも僕も昔聞いたことがあるよ」
「私もありますね。私たち神からしてもとても昔の童謡ですよ」
「残念ながらタイトルも歌詞も僕は知らないけどね」
聞けばわかるという程度らしい。
「お見苦しいモノをお聞かせしてしまって――」
「いや? 綺麗だったし、別にいいと思うけど?」
「
「それに、歌なんて久しぶりに聞いた」
それはそうだろう。
こんな所にこもっていたら歌を聴く機会なんてないに違いない。