「そこ、違うよ!」

「ここはそっちの定義を使う!!」

「大天神祭がどうして誕生したかなんて常識だろうが!!!」



 俺は非常に疲れていた。
 原因は言わずもがな。
 碧風(ヘキフ)様だ。
 それ以外にはない。
 碧風(ヘキフ)様は俺が思っていた以上の、超スパルタだった。
 ものには限度があると思う。
 これはそれをはるかに超えている。
 だが、俺の言葉なんてピシャリと遮られる。
 口答えなんて許されない。
 それが今の状態だった……
 心配していた通り、元々のイイ性格が実によく反映されている。
 稀に…………いや、だんだん言葉遣いが悪くなってきている。
 いつもの丁寧な言葉遣いが忘却の彼方だ。
 本気で容赦がない。
 もうすでに八時間以上もしごかれているが、一度も休憩はない。
 白雲(シユク)さんもたまに助言してくれたりするが、ほとんどは碧風(ヘキフ)様だ。
 俺が間違えるたびに怒号が飛ぶ。
 蒼氷(ソウヒ)は我関せずと言った感じでテラスで読書中で、白雲(シユク)さんはいろいろやらかしながら掃除をしている……ハズだ。
 だが、今の俺にそんな事を気にする余裕なんて微塵もなかった。
 この目の前にある分厚い教本をしっかりと頭に入れなければならない。
 そうしなければ命にまで係わりそうな気がする。
 横には笑顔だが全く目が笑っていない……かなり怖い碧風(ヘキフ)様がいる。
 出来るだけ教本を早く頭に入れなければ……身が持たない。
 だってこれは、俺が試験に受かるまで続く地獄の猛特訓ロード。
 俺は戦々恐々としながら鬼教官の一切の温情と容赦のない超スパルタ講義を受けていた。