今日は制裁部の地獄と審判の神、黒穢(クロエ)様に助っ人を頼まれた。
 なのでかなり、気が重い。
 黒穢(クロエ)様……人遣いが荒いんだよな……
 以前制裁部に行って、ボロボロになるまでこき使われた記憶が蘇る。
 心の底から憂鬱だが、行かないわけにはいかない。
 何が大変かって、白雲(シユク)さんのフォローが一番大変なんだよな。
 今回も当然、白雲(シユク)さんと一緒だ。
 白雲(シユク)さんは元々制裁部の所属なのだから当然といえば当然なのだが……
 そうこうしている間に黒い扉の前に着いてしまった。
 もう腹を括るしかない。
 そして扉を開けた。
「ん……そなた達か――」
 相変わらず部屋の中は凄いことになっていた。
「調度良い、ちょっとこの書類を三課に持って行ってくれ」
 そう言われた書類は山のようにうず高く積っていた。
「これを……全部?」
「当然だ」
 とても一度に持ちきれる量じゃない。
 二人いても、だ。
「はい。わかりました」
 だが白雲(シユク)さんは普通に返事をする。
 ここではこの書類の量はあたりまえなのだろうか?
 まあここで考えていると叱咤される。
 文句も言わずにただ黙々と運ぶのが吉だ。
 そう思って俺と白雲(シユク)さんは書類を手分けして運ぶことになった。
 白雲(シユク)さんって体力あるから実は俺より書類をたくさん持てるけど必ず転ぶからな……
 あまりたくさん持たれても困るよな……
 そして、懸念していた通り白雲(シユク)さんは三課にたどり着くまで四回転んでくれた。




 そしてようやく三課に着いた。
 そして扉を開けると――
「ええーい!! 貴様は何回この私にお茶をぶちまければ気が済むんだ!!!」

 怒鳴り声が聞こえて思わず手に持っていた書類を落としそうになった。
「い、一体何が――」
「あれは白雲(シユク)を超えるかもしれないドジの持ち主、吏神・灰利(ハイリ)が三課の課長にこってり絞られてるんだよ」
 振り向くとそこには前、制裁の扉が開いて大騒ぎになった時に世話になった人がいた。
「よ、白雲(シユク)
柿雷(シライ)、久しぶりです」
白雲(シユク)さんの知り合い?」
「おおうよ。友達だ」
 びしっと親指を立ててそう言った。
「オレは柿雷(シライ)、鬼神をやってる。よろしくな」
「はい。俺は死神の緋燿(ヒヨウ)です」
 以前はお世話になりましたと挨拶するとパタパタと手を振った。
「困った時はお互い様さ」
 ずいぶんとさっぱりした性格のようだ。
 俺達は柿雷(シライ)さんに書類をどこに置けばいいのか尋ね、それを置きに行った。
 戻って来ると柿雷(シライ)さんは灰利(ハイリ)に声をかけていた。
「大変だったな〜、灰利(ハイリ)
「あ、柿雷(シライ)サマ……」
 元気がない。
 まぁ、当然だろう。
 こってり絞られていたようだし――
「ま、頑張れ。努力はいつか実を結ぶんだぞ〜。ここに実例がいる」
 そう言って白雲(シユク)さんを指差した。
「えへへ〜」
 確かに似たような感じだが……
「ボクも散々失敗して黒穢(クロエ)様に怒られたな〜」
 しみじみと言われても――
「でもボク……何やっても駄目だし…………得意なことなんてない……勉強が得意なわけでも、武術が得意なわけでもないし……」
 シュン。
 項垂れる灰利(ハイリ)
 そして仕事があるからと一礼して去って行った。
 …………大丈夫なのか?
 人事ながら心配になる。
「アイツ泣かないんだよな〜」
「泣かない?」
「そ。泣いたらこれ以上何も出来なくなりそうだからってさ」
 頑張るよな〜、という言葉に同意する。
「それにしても……白雲(シユク)さんの上手がいたとは――」
 これ以上上はいないと思っていたが……
白雲(シユク)は頭は良いからな」
「勉強だけは得意です」
 そう言えば、蒼氷(ソウヒ)が言ってたな。SSランクの昇格試験は軽くパスできるって――
 人は見かけによらないよな……
「オレも昔世話になったからな〜」
 試験の話になって俺は凹んだ。
 ――俺も頑張らないといけないんだよな……
 いい加減Aランク試験に合格しないとヤバい。
 ヤバいのだが……
 ……そう簡単に合格できたら苦労はしない。