蒼氷(ソウヒ)の文献は知らないうちに増えていることが多い。
 どういうことだろうか……
 気になったので直接蒼氷(ソウヒ)に聞いてみた。
蒼氷(ソウヒ)
「何、緋燿(ヒヨウ)
「お前の文献って、気がつくと増えてるよな」
「そう?」
「そうだ」
「まあ、取り寄せてるからね」
「買ってるのか……」
 いつの間に……
 ん……
「でも、俺、一度もそんな宅配便は受け取った覚えがないんだが……」
「それはそうですよ」
 後ろから紅茶を手にした碧風(ヘキフ)様が現れた。
「あの……それはどういう――」
蒼氷(ソウヒ)の書籍は直接書庫に届くんです」
「はぁ――?」
 一体何を言っているんだろう?
「空間転送陣が書庫にあるんだよ? 見たことない?」
 言われてもわからない
 書庫には何度も入ったことがあるが……
 見た覚えがない。
「ああ、なるほど」
 碧風(ヘキフ)様が何かに気がついたようだった。
「どうしたの? 碧風(ヘキフ)
緋燿(ヒヨウ)はまだBランクなので陣が見えないんですよ」
「ああ、そっか」
 蒼氷(ソウヒ)がポンと手を叩いた。
「陣自体がかなり強い力を持ってるから不可視の力が働くんだっけ」
「ランクの低い神が陣に触れてもいい事はありませんからね」
 ……知らなかった。
白雲(シユク)には近寄らないように言ってたんだけど……」
 緋燿(ヒヨウ)には忘れてたとあっさりと言った。
「でもなんでまたそんな陣がここに?」
「めんどくさいって言われたんだよね」
「はぁ――?」
「一度にたくさん注文するからここまで持っていくのが大変だって言われたんだよ。それで向こうが書庫に転送陣を描いて直接送れるようにしたんだよね」
「……嫌がられるって……どれだけ頼んだんだよ」
「う〜ん……一度に百冊ぐらいかな」
 それは嫌がられるだろ……
蒼氷(ソウヒ)って本好きだよな」
「うん」
「まぁ、ここじゃ他にやることなんてないか……」
「違いますよ」
「えっ? 何が――」
蒼氷(ソウヒ)は昔から本の虫です」
 ここに来てからじゃないと訂正される。
「だから蒼氷(ソウヒ)はとっても頭が良いんですよ」
 人は見かけによらない。
 そんな言葉が頭に浮かんだ。