夜曇(ヤクモ)を倒したことで蒼氷(ソウヒ)は元気になった。
 そして髪の色も身長もばっちり戻った。
 確かに以前よりは伸びている。
 俺の身長は175cmだ。
 それより若干低いので、以前碧風(ヘキフ)様が言っていた通り170ぐらいなのだろう。

 蒼氷(ソウヒ)が元気になり、力も回復して来たので俺にかけた術も解いてくれた。

 これで前よりも動きやすくなった。
 やはり30cmも違うと見える景色や届く範囲が違う。
 以前より格段に掃除がしやすい。
 壊れた蒼氷(ソウヒ)の部屋の瓦礫を外に捨てながら空を見上げた。

「ん?」

 なんか……違う?

「んん?」

 少し、明るい藍色になった、か?
「何ぼぉっと空を見上げてるの?」
 少し低い声が聞こえた。
 子供の姿から元に戻ったことで声も大人の状態に戻ったようだ。
 言葉遣いは聞きなれたものだが、少し低いので違和感を感じる。
蒼氷(ソウヒ)
 そして、だいぶ顔色も良くなった。
 桜愛(ササネ)様や金音(カナリ)様が言うにはもう心配ないとのことだ。
「空が――」
「空?」
 蒼氷(ソウヒ)も俺と同じように空を見上げた。
「明るくなったような?」
「ああ、それは当然だよ」
「当然?」
「だって神界が夜に閉ざされたのは夜曇(ヤクモ)のせいだもん。夜曇(ヤクモ)がいなくなったら元に戻るに決まってるじゃない」
 そうか……そうだったな……

「神界には昔と同じように朝と夜が来るようになる」

 一年中星空の時代は終わった。
 これからは地上と同じように空が変わっていく。
「まだ影響が残っているからいきなり変わったりはしないだろうけど……ひと月もしないうちに元通りになるよ」
「そっか……」

「楽しみ?」

 それは……
「……楽しみだな」
 俺は神界の青い空を一度も見たことがないから……

「青空も、夕日も、朝焼けも、楽しみだ」

 それが素直な感情だった。