ごとごと……

 なんか音が聞こえる。
 そう思うが確かめることは出来ない。
 何故なら、音のする場所は書庫だからだ。
 この書庫は俺のようなランクの低い神では立ち入れないようになっている場所がたくさんある。
 俺が入れるのはごく一部だ。
 そして、その音は明らかに俺の立ち入れない場所から聞こえる。

 どこからかというと、床から。

 この書庫が普通の構造をしていない事はもうわかっている。
 蒼氷(ソウヒ)がたくさんの階層を創って本を管理しているからだ。
 当然、中には危険なものも存在する。

蒼氷(ソウヒ)に知らせるべきだな」

 俺ではどうにも出来ないので早々に蒼氷(ソウヒ)に報告することにした。
 掃除は一時中断だ。




「書庫の地下から物音〜」
 蒼氷(ソウヒ)に知らせると、物凄く嫌そうな顔をした。
「床の下から聞こえるんですか?」
「はい」
 蒼氷(ソウヒ)碧風(ヘキフ)様が顔を見合わせた。
「僕まだ完全回復してないんだけど……」
「でも、地下の音って……原因は呪いの文献以外にありえませんよね」
「だよね」
 放り込んでいた呪いの文献の封が外れたのだろうか?
「中で動き回ってるって……まず過ぎるよ」
「呪いが感染してしまうかもしれませんね」
 呪いが、感染する?
「あれってうつるのか?」
「当り前じゃない」
 でなければ呪いの文献など絶滅していると蒼氷(ソウヒ)は呟いた。
 言われてみればそうかもしれない。
蒼氷(ソウヒ)、まずいですよ。ここには呪いが好みそうな古い書物が大量にあります。早めになんとかしないと手に負えなくなりますよ」
「確かに……」
 呪いに好きな書物とかあるのか……
 知らなかった……
「しかたないから、今から碧風(ヘキフ)と一緒に見てくるよ。でも、危ないから緋燿(ヒヨウ)(ヒヨウ)はしばらく書庫には近づかないようにしたほうがいいよ」
「わかった」
 蒼氷(ソウヒ)は溜め息を吐きながら書庫に向かっていった。

 そんな二人が帰ってきたのは深夜になってからだった。
 余程大変だったのか、蒼氷(ソウヒ)碧風(ヘキフ)様におぶさって帰って来た。
 そして三日間も目覚めなかった。
 呪いの文献は溜めるものじゃないねと、気がついた蒼氷(ソウヒ)がしみじみと言っていた。