ふらふらとしながらも
蒼氷は起き上がった。
「
蒼氷ソウヒ様」
「寝ているわけにはいかないから――」
「だが……」
「私は、最高ランクの神…………今の私なら、多少なりとも役には立てます」
「あっ――」
心配する
桜愛ササネ様をよそに、
蒼氷ソウヒは……
蒼氷ソウヒ様は立ち上がった。
「
夜曇ヤクモの封印が外れたことで、神術が使えます」
明らかに無理をしている。そんなことは全員が承知のことだ。
だが――
「そう、ですね。残念ながら、あの、
夜曇ヤクモ相手です。戦力は多いに越したことはありません」
「
蒼氷ソウヒ、無理はしないでくださいね」
「…………
碧風ヘキフ、馬鹿なことを言うものじゃないよ」
そう言って
蒼氷ソウヒ様は笑った。
「今、無理をしないでいつ無理をするというの?」
「それ、は――」
「あれを野放しにするくらいなら……」
そこには確かな決意があった。
「しかたがない。
蒼氷ソウヒサマの言う事は間違ってない。あれを倒すのは最優先だよ」
碧風ヘキフ様もわかってはいるのだろう。
ただ、
蒼氷ソウヒ様にそんなことをして欲しくないという思いが強いだけで――
「
金音カナリ、作戦は? 時間が経てば経つほど
夜曇ヤクモに手が出せなくなる。今なら、まだ封印が外れたばかりの今なら、そう力も回復していないはず」
「そうだね」
「私の力はほとんど戻っていないけれど、それは逆にまだ
夜曇ヤクモを縛っている証拠。今なら……きっとやれる」
「
夜曇ヤクモの動きを止め、世界樹の雫を
夜曇ヤクモの瞳にかける。それから浄化の光をありったけの力で放つ。
そうすればおそらく……あれを倒せるはずだ」
「なるほど、ならば動きを止める者、世界樹の雫をかける者、攻撃を仕掛ける者、あとは陽動が必要か……」
「動きを止めるなら束縛の光だね。それは私と
金音カナリが使える」
「浄化の光はわらわと
蒼氷ソウヒと
銀生カネユと
紫闇シアンじゃな」
「では、わたくしが世界樹の雫を
夜曇ヤクモにかけます」
「陽動は――」
「ボクが行きます」
「
白雲シユク、そなたが?」
「はい、この場で
夜曇ヤクモの注意を引き付けることができるのはボクだけです」
「そうですね。
緋燿ヒヨウにそれは無理……」
「でももう一人ぐらい――」
「いいえ、ボクだけでやります」
「
白雲シユク」
「動きを止めることも、攻撃も、人手を割くわけにはいきません」
白雲シユクさん……
「ありがとう、
白雲シユク。貴方には悪いですが、頑張ってもらいます」
そう言った
蒼氷ソウヒ様は、いつもと全く違った。
冷徹な判断をする。
守るために――
これが、最強といわれる神の決断――
何も出来ない自分がとても歯がゆかった……