蒼氷(ソウヒ)はいつも通りテラスで紅茶を飲んでいる。
 だが、今日はそこにいるのは蒼氷(ソウヒ)だけではない。
 この前から居候を始めた碧風(ヘキフ)様も一緒にいる。
 二人は仲良く紅茶を飲んでいる。
 幼馴染というだけあって仲が良い。
 年は蒼氷(ソウヒ)の方が若干上らしい。
 楽しそうに話をしているが、これといって重要な話などするわけもなく、仕事の話も全くしない。
 昔の話でもしているのかと思ったが、それも違う。
 ――というか、碧風(ヘキフ)様も蒼氷(ソウヒ)も全く昔のことに触れない。
 どういう理由があるのかわからないが……
 ――で、結局何を話しているのかというと、ホント、他愛のないことを話している。
 主に文献とか紅茶とかそんなこと。
 この前読んだ本は〜、といった感じで感想を言い合ったりしている。
 ホント、全く仕事のことに触れずに暢気に喋っている二人。
 蒼氷(ソウヒ)はともかく碧風(ヘキフ)様は平気なのか?
 そんなことを聞こうものなら睨まれるから出来ないが……
 碧風(ヘキフ)様が来てから苦労が増えた。
 だが、白雲(シユク)さんが破壊する品物を直してくれるのは助かる。
 あれを買いに行くのも大変だからな。
 さて、今日は紫闇(シアン)様から仕事を任されたので行かなければならないのだが、気が進まない。
 何故なら、この二人、遠慮という言葉を知らないからだ。
 だが、言わないわけにもいかない。
 俺は意を決して二人に声をかけた。
蒼氷(ソウヒ)
「何? 緋燿(ヒヨウ)
「今から地上に仕事に行って来る」
「地上に?」
「茶菓子はこれで十分だろう」
 そう言って俺はケーキを二人に渡した。
「お土産が欲しいです」
 ニコニコしながら碧風(ヘキフ)様は言った。
「そうだね。ワインとケーキと紅茶でよろしく」
 ……ホント、容赦ない。
「よろしくお願いします」
 やはり、蒼氷(ソウヒ)の幼馴染というだけあって碧風(ヘキフ)様もタダものじゃない。
 こういう場合は少し蒼氷(ソウヒ)を窘めるだろう。
 だが、唆すような言葉を口にしたりする。
 この人も結構イイ性格をしているようだ。
「はぁ……」
 ただの一介の死神に逆らう権力などある筈もない。
 俺は当然の如くごく当たり前のように土産を買ってこなければならない。
 理不尽だ……
 まかり間違ってイヤだなどと言おうものなら、駄駄こねたりするからな。
 年を考えろと言いたい。
 この年で諦めも肝心であることを学んだ。