
俺は
勿論、買出しも忘れずに行って来たので、荷物はいつも通り多い。
その所為か、今日はいつもより遅くなってしまった。
「これから晩御飯の用意か……」
気が滅入る。
そう重いながら扉に手をかけた。
「
上を見上げると、テラスからこちらを見下ろしている
珍しいこともあるものだ。
いつもならほったらかしの癖に……
「今日は遅かったね」
――これは飯の催促なのか?
「わかってるよ。これから急いで作るから少し待ってろ」
だが、
「――ご愁傷様」
何故かそう言って身体を引っ込めた。
「一体何なんだ?」
俺はそう重いながら扉を開けた。
そして、何故、
館内にただよう怪しげな臭い……
脳内で危険信号が響く。
俺は顔を引きつらせながらも、問題の部屋…………キッチンへ向かった。
はっきり言って開けるのが物凄く怖い。
だが、開けないわけにもいかない。
意を決して扉を開けると、今までよりも強烈な臭いに思わず反射的に扉を閉めてしまいそうになった。
「あ、お帰りなさい。
無邪気な笑顔。
だが、俺は失神してしまいそうだった。
カオス状態のキッチン……臭いも半端ない。
充満している臭いはとても食べ物の臭いではない。
そう、断じて――
なのに、なんで、そんな風に笑っていられるんだ?
何か鍋がぐつぐついっている。
「
その言葉に泣いてしまいそうだった。
「し……
「カレーです」
カレー? どこが!?
俺はそう叫びたいのを必死にガマンした。
とてもカレーの臭いではない。
「待っていてくださいね。もうすぐ出来ますから」
出来なくていいと思った俺はけして悪くないはずだ。
そして、俺は見てしまった。
明らかに食べ物の色ではなかった。
例えるならば、そう――あの趣味の悪い制裁の扉だ。
ここから逃げ出したかった。
そしてポンと肩を叩かれる。
振り向くと
「だから言ったじゃない。ご愁傷様」
「
「そして言ったよね。命が惜しくば自分で作りなって」
ああ、聞いた。聞いていたよ。
今、物凄く身にしみているよ。
向こうでは
白米はまともそうだが、上にのったマーブル模様の得体の知れない物体Xが台無しにしている。
ポンポンと肩を叩くと
俺は半ば呆然としながら
「
臭いだけで失神しそうな俺は尋ねた。
「――神術って便利だよね」
泣きたい。
だが、怪しい臭いを放つカレー(とはとても呼べないもの)は目の前に置かれた。
隣を見ると
とてもじゃないが、全く、これっぽっちも、食欲などわかない怪しい臭いを放ち、怪しい色をした物体にスプーンを恐る恐る入れた。
そして意を決して一口――
その瞬間、意識がブラックアウトした――――