
コンコン……
控えめなノックの音がした。
珍しいこともあるものだな。
そう思いながら俺は玄関に向かった。
何故なら、俺がここに来てからこの館に来たものは誰もいない。
玄関を開けると、そこには一人の神様がいた。
「こんにちは」
誰だろう?
「あれ?
頭上から声がした。ああ、そういえばテラスで本読んでたな。
普通に空を飛んで降りてくる。
この人玄関いらないよな。
俺と始めて会った時もテラスから降りてきたし。
「お久しぶりです。
「うん、そうだね。何かあったの?
「はい、その
そう言って
封筒を開けて中を見る
「…………ここでしばらく修行しろって?」
「…………はい。
しゅんとしている。
「あ〜、
「ボクが至らないだけだと思います」
「じゃあ、またここで働いてもらおうかな」
「はい! よろしくお願いします」
また?
「
「
「ああ、よろしく」
がっちり握手をされる。
「
確かに彼は俺より二ランク上の神だろう。
そんなの翼見ればすぐにわかる。
「そうですか? でも、ボク迷惑掛けるだろうし……」
物凄く謙虚な人だ。
「大丈夫だよ。僕は一切気にしないから」
「そう言ってくれるのは
迷惑なら
「じゃあ、ボク掃除しますね!」
慣れた様子で中に入っていく。
「ちょっと、
がしっと
何だ? いきなり…………
「彼、悪気は一切ないんだ」
いきなり何を言い出すんだ?
「いつも一生懸命なんだけどなかなか実を結ばないというか……」
実を結ばない?
「だから、何をやっても責めないでやってね」
…………
「なんの話だ?」
「彼ね、何もないところでよく転ぶんだ」
「転ぶ……それが何か問題あるのか?」
本人が痛いだけじゃ……
「うん。物持ったままでも転ぶからお茶こぼしたり書類ぶちまけたり……
でもまあそれはまだ序の口だね」
序の口? まだ何かあるのか――
「皿を洗うと三枚に一枚は落とすし、掃除をすると必ず物を落とすし、料理にいたっては食べられるもので調理したはずなのに危険な物体エックスが出来上がるんだ。それが結構毒性が高くて……どうやったら毒の一切入ってないものからあれだけの毒素を作り出せるんだろうって感心しちゃった」
それは料理じゃないだろう!
「それ、食べたのか?」
「うん。
そんなヤバイものを!?
思わず一歩後ずさる。
「僕や
ああ、そうか。
ランクが高い神は毒素を体内に摂取しても取り込まれないから平気なんだったな。
「だから、命が欲しかったら
顔が引きつるのを感じた……
がっしゃーん!!
そして中から盛大に破壊音が響く。
「あ〜、さっそく壊してるね」
その破壊音を全く気にしていない館の主。
心が広いとかそういうんじゃなく、ただ単に大雑把なだけだと俺は思う。
「きっと失敗ばっかりするから
可哀想に、とか言ってるが本当に可哀想になるのは誰だ?
今、ここで確実に苦労の種は増えた。