がっしゃーん!!!

 派手な音が館に響く。
 だが、最早これも聞きなれた音だ。
 きっとまたいつものように白雲(シユク)さんがすっころんで何かを割ったのだろう。
 そう思ってリビングに行くと予想通り白雲(シユク)さんが皿を割っていた。
 それを微笑ましく見ている碧風(ヘキフ)様。
 碧風(ヘキフ)様も蒼氷(ソウヒ)と同類だから何も言ってくれないからな……
「ああ、またやってしまいました……」
 そう言って白雲(シユク)さんは箒を取りに行こうとした。
 ベシャ――
 そしてまたコケる。
 でも白雲(シユク)さんって毎度毎度転ぶけど……怪我しないよな。
 生傷が絶えなさそうな所業を毎日している割に怪我をしているのを一度も見たことがない。
 ……白雲(シユク)さんって、意外と身体丈夫だよな。
 そう思っていると今度はゴミ箱をひっくり返していた。
 ……このドジははたして治るのか?
 白雲(シユク)さんは采神になれるようにここで修行しているとのことだが――
 この天性ともいえるドジが治るようにはとても見えない。
 ――大丈夫なのか?
 片付けようとしてさらに散らかしてしまっている白雲(シユク)さんのフォローをするべく俺は箒を取りに行った。
 白雲(シユク)さんに任せていては終わらない。
 そして散乱している皿をまず集めて木の器に入れる。
 後は散らばっているゴミをゴミ箱に戻すだけだ。
「――これでよし」
 それから皿の破片を入れた木の器を碧風(ヘキフ)様に渡す。
「お願いします」
「いいよ」
 軽くそう返事をするといつものように割れた皿を元に戻してくれた。
 碧風(ヘキフ)様のおかげで
 食器を補充しに行かなくても良くなったのは利点だ。
「はい」
 終わった皿を貰い、シンクに置きに行く。
 これは当然洗わないと使えない。
「ごめんなさい……」
 ――シュンとしている白雲(シユク)さん。
 そんな顔をされるとこちらが悪い気になってくる。
「全く気にしてないから平気だよ」
 後ろからそう声が聞こえた。
 蒼氷(ソウヒ)だ。
 確かに、蒼氷(ソウヒ)は気にしないだろう。
 別に皿が割れても部屋が汚れても片付けるのは俺であって蒼氷(ソウヒ)じゃない。
「確かに、ここでいくら失敗しても咎められることはないね」
「ここは不変の秩序だからね……」
 稀に蒼氷(ソウヒ)碧風(ヘキフ)様は謎の単語を発する。
 偶に、俺はここに居るべき存在ではないという気にさせられる。
 ここは一体何だというのか……
白雲(シユク)
「はい」
「無理に変わらなくていいよ」
蒼氷(ソウヒ)様?」
「無理は必ず後で付けがくるから……」
 そう言った蒼氷(ソウヒ)はとても哀しそうだった。
「そう――」
「気にしなくても大丈夫ですよ。ちゃんと成長してますから」
「そうだよね。前より転ぶ回数減って来たし……」
 言われて考える。
 確かに最初よりは……減った…………か――
「そうですか?」
「そうそう」
「大丈夫」
 こんな感じで毎日が過ぎてゆく。
 今日も平和(?)なのか……