俺は先日、ようやく念願のAランク昇格試験に合格した。
 そのため、近いうちに葬送部に帰ることになった。
 元々ここに来たのは修行のためだ。
 紫闇(シアン)様がわざわざ蒼氷(ソウヒ)に頼んでくれた。
 でも、目的を達した今、ここにいるわけにはいかない。
 だって俺は葬送部の死神だ。

 だから荷物を持って帰らなければならない。

 荷物整理をしていると、蒼氷(ソウヒ)碧風(ヘキフ)様も忙しそうに廊下を歩いている。
碧風(ヘキフ)様、何してるんですか?」
 書物を持って歩いている碧風(ヘキフ)様に声をかけた。
「ここに至言部が出来るでしょう?」
「はい」
「だからここにある荷物を一時的に執行部に運ぶことになったんです」
 ああそうか……
 この建物が無くなるってことは中にある荷物を全部運び出さないといけ――
 そこで俺はあることに気づいた。

「書物、全部運び出すんですか?」

 確かここにある蔵書の数は半端なかったはずだ。
「当り前じゃない」
 何を言ってるんだといった感じでたくさんの書物を持った蒼氷(ソウヒ)が答えた。

 いつの間に……

「心配しなくても藍水(アイナ)柿雷(シライ)戒空(カイア)光黄(ミツキ)……それから至言部に異動になったっていう子たちが手伝ってくれるってさ」
「そうなんですか」
緋燿(ヒヨウ)も手伝ってくれますか?」
「え? はい、それは良いですけど……俺はあの書庫に入れないんじゃ――」
 そういうと蒼氷(ソウヒ)は笑って言った。
「あそこには入れないのはBランク以下だよ。あんまり深いところはSランク以上じゃないと入れないけど、Aランクならある程度の階層まで入れるよ」
 なるほど……

蒼氷(ソウヒ)様、戒空(カイア)さんとお手伝いに来た警務官と公務官の方がいらっしゃいました」
 エントランスの方から白雲(シユク)さんの声が聞こえた。
「ここに呼んでー」
「はーい」
 そして戒空(カイア)さんと女性二人が来た。
 ……女性…………
 明らかに荷物を運ぶには適さない気が……
 特に青い髪の女性は見た目的にかなりおしとやかそうだ。
「お久しぶりです、蒼氷(ソウヒ)様」
「うん、久しぶり」
「始めまして。闘神の夕橙(ゆとう)です」
「文神の青守(きよえ)です」
「ちゃんとAランク以上の神を連れて来てくれたね」
「はい。Aランク以上でなければ中に入れないとおっしゃられたので」
「じゃあさっそくで悪いけどお願い」
「はい」
緋燿(ヒヨウ)、案内して」
 ついでにそのまま手伝ってねと言われる。
 俺は言われるまま三人を書庫に案内した。

 そして初めて入った書庫の中は、思った以上に広かった……
 とても一日では終わらない……
 戒空(カイア)さんも、もっとたくさん人手が必要ですねと言っていた。
 明日はきっと今日以上の人数が来る気がした。