
青い空の下、桜の側に
「おめでとう」
ふわりと微笑んだ。
改めて言われると、照れる。
「ありがとう、ございます」
「
そう言われて、ここに来た時のことを思い出した。
初めて来た時は、何も知らなかった。
極彩色の扉が制裁の扉と呼ばれ、ここに人間の魂がやってくることを知った。
断罪と執行の神様に初めて会った。
中央会議や聖例会議をすっぽかす人を初めて見た。
隠されていた真実、禍神・
慈愛と転生の神様の婚約者が
識者の館が貴重な書物の保管庫であることを知った。
至高四神最後の一人、統轄と徳性の神様に会った。
制裁部について、詳しいことを知った。
転生部にも行った。
初めて、青い空を知った。
新しい部署が出来て――
俺はようやく当初の目的、昇格試験に合格した。
大変なことも、無茶苦茶なこともたくさんあった。
でも、全てが無駄ではなかった。
唯の、一介の死神が知り合うことなどとてもできない偉い神様に会えた。
至高四神に勉強を教えてもらえるなんて、普通は出来ない。
全てが貴重な体験だった。
今なら、わかる。
出来の悪い自分の面倒を、とてもよくみてくれたこと……
感謝しても、しきれなかった。
「これを――」
そう言って
反射的に受け取る。
「僕からの合格祝いです」
静かに微笑みながら、そう告げた。
「ありがとう、ござ、います」
熱いものが、こみ上げてくる。
「
風が、吹いた。
はらり、はらり、と桜の花びらが降りて来る。
ああ、もうここで、終わりなんだ――
思い出の場所さえ、残らない。
共に過ごした場所は、消えてしまうのだから……残るのは、心にある思い出としてだけだ。
でも、忘れない。
忘れられるはずが、ない。
だから、寂しかったけど、悲しくはなかった。
「また、会えるといいね」
そうだな……そう、思う。
でも、次に会う時は……きっと――
――――気安く声などかけられないだろう。