今日は教学部に来ている。
 教学部は勉強をする場所だ。
 ここには翼を持たない神候補の子供たちがたくさんいる。
 もちろん俺も昔はここにいたし、蒼氷(ソウヒ)碧風(ヘキフ)様にしたってそうだろう。
 一応言っておくが、ここに来たのは子供たちを眺めたり教神たちに用があるわけではない。

 仕事で来たのだ。

 もちろん、俺が、ではない。
 勉学に関しては落ちこぼれ以外の何ものでもない俺が教育など出来るはずがないからだ。
 ここに仕事としてきたのは、蒼氷(ソウヒ)碧風(ヘキフ)様だ。
 特別講師を頼まれたのだ。
 依頼してきたのは銀生(カネユ)様。
 お目付け役として藍水(アイナ)さんもいる。

 どう考えても逃げられないと悟ってか、大人しく教学部まで来た。

 この二人が非常に優秀なのは自分が一番よく解っている。
 なんせ勉強が出来ない俺にみっちり教えてくれるからだ。
 だが、この二人ははたしてこんな子供たちに勉強を教えて良いキャラなのかというと…………微妙だ。
 なんせ碧風(ヘキフ)様はあの性格のあのスパルタ講義……
 蒼氷(ソウヒ)は何の資料も用意せずに淀みなく喋り続ける。

 明らかに子供向けではない。

 銀生(カネユ)様も一体何を考えてあの二人にこんな仕事を持って来たのか……
 適材適所というものがあると思う。
 あの二人は俺のようにある程度の年齢に達した者ならいいが、子供に教えられるような講義は全くしない。

 大丈夫なのだろうか?

 一抹の不安がよぎる。
 あの二人は変なところで鈍いからあれをそのままやりかねない。

 そして、その懸念は的中することになる。





 蒼氷(ソウヒ)はいつものように神界の歴史をスラスラと喋っていく。
 たまに碧風(ヘキフ)様が注釈をつけるが、それ以外はノンストップだ。

 子供達のぽかん、とした表情が目に入らないのだろうか?

 入らないのだろう、多分。
 あの二人はゴーイングマイウェイを素でいく人たちだ。
「相変わらず蒼氷(ソウヒ)サマの講義は素晴らしいな」
 横で藍水(アイナ)さんが感心したように聞き入っている。
「微笑ましいですね」
 どこをどう見たらそう見えるのだろうか?
 白雲(シユク)さんもたまに俺が理解不能な事を言う。

 俺には全くこれっぽっちも微笑ましくなんて見えない。
 やはりどう見ても人選ミスだ。