相変わらず碧風(ヘキフ)様は識者の館にいる。
 すっかりここにいついてしまっている。
 居心地が良いのだろうか?
 それとも、蒼氷(ソウヒ)がここにいるからなのかはわからないが。
 そんなわけで今日も連れ戻しに藍水(アイナ)さんが来ていた。
 今回は、仕事が溜まっているのだから一時的に帰ってこいというわけではなく、執行部に帰ってこいということだ。
 いつまでもここにいるなということらしい。
 だが、それを素直に碧風(ヘキフ)様が受け入れるはずはなかった。

「嫌です! 私はまだここにいます!!」
「我が儘を仰らないでください!」
「嫌なものは嫌です! 仕事はしたでしょ!」
「仕事というものは日々溜まるものです。執行部の統括神は碧風(ヘキフ)サマなのですよ? このような場所で油売ってる暇など微塵もありません」
「私はやりたくてやってるわけじゃありません!」
「それでも今現在の統括神はアナタサマです! ご理解していらっしゃいますか!?」
「したくありません!!」
「してください! アナタサマはそれでも統括神ですか!?」
「嫌ッ!」
碧風(ヘキフ)サマ! いい加減にしてください! 子供じゃあるまいし!!」
「嫌だと言ったら嫌です!!」

 話し合いは一向に終わる気配を見せない。
 これはあれだ。
 蒼氷(ソウヒ)銀生(カネユ)様の時と同じだ。
 双方自分の主張を言うだけの――

「その態度! 私は断罪と執行の神ですよ! もっと敬いなさい! そして命令に従えー!!!」
「適切な命令なら従いますが、その命令は不可です!」
「憎たらしい!!」
「憎たらしくても結構です! さあいい加減に観念してください!」
「嫌ッ!!」
碧風(ヘキフ)サマ!!」

 話し合いはだんだんエスカレートしていく。
 これは蒼氷(ソウヒ)銀生(カネユ)様の時と同様、近づかないにこしたことはない。
 そう結論付けた俺はその場を後にした。