
別れの日がやって来た。
俺は人手不足の、葬送部の公務官。
俺の修業は終わった。
今日、帰ることになっている。
「さよなら……か――」
暗い気分になりそうで首を振った。
寂しくても、悲しくはないし、辛いわけではないのだから。
それに、お別れなのは俺だけじゃない。
今の識者の館は空っぽだ。
何日もかけて全ての書物を運び出した。
残っているのは家具だけだ。
それはこの建物と一緒に処分される。
どうしてもとっておきたい物だけ運び出したらしい。
これからここに至言部の建物を建造する作業に入る。
だから
みんなバラバラになる。
だが、これが本来あるべき姿だ。
もう気軽に会うことなど出来ないだろう。
そう思うと、涙が出て来た。
涙はここに置いて行こう。
みんなの前でそんな姿見せられない。
別れる時は、笑顔でいたい。
悲しい別れではないのだから。
だから、今のうちに寂しい気持ちをここに置いて行こうと思った。