
識者の館には朽ちた樹がある。
昔は相当立派だったんじゃないかと思われる樹だ。
今はもう見る影もないが――
そう思って樹を見ていると、後ろから
「世界樹を見てるの?」
「世界樹?」
これが?
世界樹の話は聞いたことがあるが……これが?
こんなに朽ち枯れ果てた樹が……?
そう思っているのが伝わったのか
「これは
「禍神のせいで……」
そっと世界樹の幹に手を置く
「これでも、まだ、生きているんだよ」
「これで!?」
恐るべき生命力だ。
「皆で世界樹を慰めているのか?」
突然の声に慌てて後ろを振り返るとそこには
スタスタと世界樹の前までやって来ると、そっと手を置いた。
「まだ、元気にはならないか……」
それを聞いた
「無理だよ。この子は……辛うじて生きているだけ」
「そうか……」
とても残念そうだった。
「そうだな……世界樹が生きていられるのはここが特異点だから……そして
そうでなければとっくに死んでいると――
「今、してあげられることは何もない」
世界樹は神界においてとても神聖な樹だ。
それがこんな側にあるなんて思いもしなかった。
「いつか、元気になってくれるだろうか?」
それは誰にも断言は出来なかった。
二人の寂しそうな表情が、頭から離れない。