不穏な空気をばら撒きながらリビングのソファーに座っている蒼氷(ソウヒ)
 今日、蒼氷(ソウヒ)の機嫌が物凄く悪い。
 それはもう…………近づきたくないというよりも、近づけないような空気を身にまとっている。
 原因はアレだ。
 昨日届いた手紙だ。
 アレが原因で蒼氷(ソウヒ)の機嫌が悪くなった。
 正直、あまり刺激しないで欲しかった。
 怖くてしょうがない。
 視線が矢のように突き刺さる。
 内容は例によって例の如く『中央会議に出席しろ』という内容だった。
 それを見た途端、手紙を握り潰し、機嫌が一気に降下した。
 一体、なんでそんなに嫌なんだ……
 よくわからないが、以前の恐ろしい記憶が蘇る。
 会議室に行き速攻で帰って来たあの時の記憶が――
 蒼氷(ソウヒ)はもう関わり合いになりたくないと思っている。
 それは何も知らない俺でもわかることだ。
「また来たんですか?」
 後ろから碧風(ヘキフ)様が現れた。
「…………そう」
「こりないですね。銀生(カネユ)も」
 蒼氷(ソウヒ)が行くことなんて絶対にないって言うのに――と呟きながら蒼氷(ソウヒ)の向かいに座った。
「私にも来たんですよね」
 そう言って手紙をヒラヒラと振る。
「私が行ってくるので蒼氷(ソウヒ)は行かなくてもいいですよ」
「最初から行く気などない」
「でしょうね」
 そんな短い会話をするとすぐに立ちがった。
 そして俺の手を引いて部屋を出る。
「……あ、あの…………碧風(ヘキフ)様?」
「今はそっとしておいてあげて――」
 そう言った碧風(ヘキフ)様はとても寂しそうだった――
 聞いて良いのだろうか?
 いけない気もするが――
 ――気になる……
「あの……碧風(ヘキフ)様」
「何ですか?」
蒼氷(ソウヒ)は…………どうして……あんなに嫌がって?」
「………………………………責任が取れないからです」
「責任?」
蒼氷(ソウヒ)は…………今の蒼氷(ソウヒ)には……それだけの力がありませんから――」
 …………何かが、俺の知らない何かが蒼氷(ソウヒ)を苦しめている…………
 それだけはわかった……