今日は最後の晩餐。
 庭にテーブルを出して料理をたくさん並べた。
 最後の日という事で奮発した。
 白雲(シユク)さんも勿論、手伝ってくれた。
 テーブルの一部に恐ろしい料理が並んでいる。
 禍々しい気配がすると思っているのはきっと俺だけだ。
 蒼氷(ソウヒ)碧風(ヘキフ)様も、当然制作者である白雲(シユク)さんも気にしない。
 それを見て引き攣っていると、後ろから蒼氷(ソウヒ)が抱き着いてきた。

白雲(シユク)の料理が恐怖?」

「……ああ」
 泣きたい気分で返事をした。
 それを聞いた蒼氷(ソウヒ)は楽しそうに笑った。
 くっ――
 人事だと思って――
「そんなに落ち込まなくても平気だよ」
 平気じゃない。

緋燿(ヒヨウ)はもう大丈夫だから」

「はっ?」
 一体何が?
 そう思っていると蒼氷(ソウヒ)が離れた。
「Aランク以上の神には影響を与えない事は確認済みだから」
「じゃあ――」
「そう。緋燿(ヒヨウ)はもう大丈夫」
 そう言ってずい――っと白雲(シユク)さんの作った料理(見た目からでは何なのか理解不能)を差し出してくる。
 今までが今までなのでちょっと怖い。
 だが、意を決して俺はそれを口に入れた。

 パクッ――

 …………食べられる。
 むしゃむしゃと咀嚼するが、なんともない。
 以前ならこの時点で失神していたハズだ。
「でも、なんか、凄く変わった味が……」
緋燿(ヒヨウ)がSランクになれば普通の料理と同じ味になるはずだけど――」
 それは俺がAランクだから毒素しか浄化出来ていないということか?
「ま、今日で最後なんだから失神なんてつまらないことして欲しくないしね」
 俺もそんな終わりは嫌だ。
「さ、あっちにいる二人と一緒に食事しよう」
「ああ」
「そして盛り上がるぞ〜」
 蒼氷(ソウヒ)は気合が入っている。
 拳を空に振り上げながら二人のいる方へ走っていく。
 俺もそれについて行った。
緋燿(ヒヨウ)、遅いですよ」
「今日はいっぱいお話しましょうね」
 笑顔の二人、楽しそうな蒼氷(ソウヒ)……

 今日という日が最高の思い出になればいいと思う。
 そのために、俺は話の輪に入った。