その日もいつもとなんら変わりはなかった。
 いつものように部屋の掃除をしていた。

 ガタ。

「ん?」
 微かな違和感に首をひねる。

 グラグラグラ……

「な……!?」
 突然、揺れ始めた。

「じ、地震!?」
 そんな馬鹿な……ここは神界――
 地震なんて起こるはず――
 そう思っても揺れは酷くなるばかり。
 俺は取り敢えず立っていられなくなり、近くにあったテーブルの足にしがみついた。

 しばらくすると揺れが治まった。

「一体何が――」
 神界は空に浮いている。
 その神界が揺れるはずはない。
 俺が今まで生きてきた中では一度もなかった。
 これからもないのだと思っていた。
 
 だが、揺れた。

「地震……神界でも起こるのか?」
 俺は気になって蒼氷(ソウヒ)に訊ねてみることにした。

蒼氷(ソウヒ)
 蒼氷(ソウヒ)を見つけて声をかけた。

 だが、蒼氷(ソウヒ)はとても暗い表情をしている。

蒼氷(ソウヒ)?」
 もう一度声を掛けると、びっくりしたようにこちらを向いた。
「え? あ、緋燿(ヒヨウ)?」
 どうかしたのだろうか?
「何か用?」
「ああ、今の地震――」
「地震――」
 硬くなる表情。

「――……………………気にしなくていいよ」

 そう言っているが、とても気にしなくていいようにはみえない。
 何か心当たりでもあるのだろうか?

 だが、俺にはそれを問いただすことなんて出来ない。
 おとなしくいつものように仕事をするだけだ。
 それが俺に出来る最善のこと――