一日の最初の仕事は井戸の水を汲むことだ。
 今日も井戸の水を汲みに行く。

 パシャン。

 桶が着水したのを確認してから水を入れて持ち上げる。
 いつもはそれを運ぶのだが……
「ん……」
 なんかいつもより黒いような……
 そう思ったが、この暗闇の中ではそれもよく解らない。
 俺はその桶の水を館に運んだ。

 館の中でもう一度よく見てみる。
 間違いない。

 井戸の水が澱み、濁っている。

 何が起こったのかよくわからないが、とりあえず蒼氷(ソウヒ)に報告した方がいいだろう。
 今の時間ならダイニングルームにいるだろう。

蒼氷(ソウヒ)
「何? 緋燿(ヒヨウ)
 新聞を読んでいた蒼氷(ソウヒ)が振り返った。
「これなんだが――」
 そう言って持って来た井戸水を蒼氷(ソウヒ)に見せた。
「これはッ――」
 それを見た途端、蒼氷(ソウヒ)の顔色が変わった。
「これは、井戸水ですか?」
 碧風(ヘキフ)様も神妙な顔つきで尋ねて来た。
「はい」
 それを聞いた二人はますます硬い表情をする。
「管理局に行き、銀生(カネユ)に事情を話して浄化石を貰ってきてください」
「浄化石って、水を浄化するあの?」
「ええ、そうです。いいですか? かならず、銀生(カネユ)に事情を話してから貰ってきてください。良いですね?」
 念を押された。
「あ、ああ、わかった」
 そういうわけで俺は朝からひとっ飛びして管理局に向かった。




 蒼氷(ソウヒ)に言われたとおり、銀生(カネユ)様の所まで案内してもらい、事情を話した。
 普通いきなり言っても会ってくれることはないのだが、さすがは蒼氷(ソウヒ)
 蒼氷(ソウヒ)の名前を出しただけで面会がすんなりできた。
 そして、事情を話すと銀生(カネユ)様も暗い顔をした。

 一体なんだというのか?
 だが、その表情の理由がわかるのはそれよりかなり後のことだ。