今日も碧風(ヘキフ)様のスパルタで心身ともにボロボロだ。
 だが、悪いのは自分であるために泣き言は言えない。

「ほら、これでも飲んで」

 そう言って蒼氷(ソウヒ)が渡してきたのは紅茶だった。
「ありがとう」
「でもこれを飲み終わったら続きだよ、いいね」
「ああ」
 そんなの、わかってる。
 蒼氷(ソウヒ)はソファーに座って紅茶を飲んでいる。
 碧風(ヘキフ)様と白雲(シユク)さんは外の空気を吸いに行った。
 俺はここで休憩。
緋燿(ヒヨウ)、わかってる?」
「……何を?」

「いつまでもこのままではいられないってこと」

「それは――」
桜愛(ササネ)は転生部に帰っただろう?」
「ああ」
「それはここにいて緋燿(ヒヨウ)の勉強の邪魔をしたくなかったからだよ」
 …………
緋燿(ヒヨウ)のために彼女は帰った」
「…………はい」
「そして碧風(ヘキフ)白雲(シユク)もいずれは元の部署に帰る」
「……はい」
「永遠に続くものなんて……変わらない不変のものなんて存在しないんだよ」
 ……静かに諭される。
 元の姿に戻ったせいか、蒼氷(ソウヒ)には威厳がある。
 ああ、やっぱり統括神なんだと、思う。
 俺とは住む場所が違うと――
「ずっとこうしていることなんて、出来ないんだよ」
「……わかって、る」
「ここに居続けるということは、緋燿(ヒヨウ)のためにはならないから」

 その言葉を噛みしめた。

 わかっている。
 そんなこと……言われなくても……
 碧風(ヘキフ)様は、付き合う必要のない俺の勉強に手を貸してくれている。
 それはとても感謝するべき事なんだと……

 十分にわかっている。
 
 でも、それが、少し寂しいと感じるのは……この生活に慣れてしまったからだろうか……?