白雲(シユク)さんのカレー(マーブル模様の物体)で二日、その後のトマトリゾット(緑色の物体)で七日、そしてレモンティー(見た目は普通)で一日寝込んだ。
 レモンティーはどこからどう見ても普通だったためすっかり油断してしまった。
 後で蒼氷(ソウヒ)に聞いたところ、白雲(シユク)さんの作るもの、料理・飲料問わず何でも毒性が高いらしい。
 一体何が原因なのか、それは蒼氷(ソウヒ)にも分からないらしい。
 だが、命が惜しければ気をつけろと言われた。
 一緒に暮らしている限り、俺は命の危険にさらされ続けると言うことだ。
 だから俺は白雲(シユク)さんの料理の腕を何とかしようと思った。
 一緒に作れば何とかなると思ったのだ。
 だが、その考えがいかに甘かったか…………後で思い知ることになる。




 用意したのはシチューの材料。
 カレーはマーブル色だった……ならシチューならばどうなのか?
 とりあえず一緒に作ることにした。
 まず、材料を切っている白雲(シユク)さん。
 さすがに材料を切る時点で何か変わったりはしなかった。
 でもかなり危なっかしい。
 よく手を切らないものだ。
 そう思いながら白雲(シユク)さんを見守っていた。
 そして段々顔が引き攣って来た。
 最初に用意したのはごく普通の材料だった。
 俺が用意したのだから間違いはない。
 だが、今、目の前にあるのは――
 ――どろりとした青い物体だった。
 何故!?
 青い色素のものなんか何も入れていない。
 それなのにどういうことだ?
 俺は思わず一歩下がった。
 怪しい臭いもしてくる。
 俺が見ている限り、材料も調味料も奇抜なものは使っていない。
 むしろ普通に料理を作っていた。
 作り方には何の問題もなかった。
 それなのに、鍋の中はいつの間にか恐ろしいものに成り果てていた。
 これは…………技術力とかそういったものが関係しているわけじゃないのか?
 一体何故?
 食べられるものしか入れていないのに食べられないものが出来るんだ?
 いやいやいや……これはどう見ても俺の手に負えるレベルじゃない。
 俺がどう頑張ってもこれをなんとかすることなんて出来るハズがない。
 俺には理解できない未知の領域だ。
 白雲(シユク)さんはニコニコ微笑んでいるが、この悪臭とか気になったりしないのだろうか……?
 それに、この料理の変貌振りに何か感じたりしないのだろうか……?
白雲(シユク)さん、この料理は……」
「シチューですね」
 言い切った。
 しかし、どこからどう見てもシチューには見えない。
「いや、あの……どうしてこんな色に――」
「綺麗な色ですよね」
 いや、そういうことではない。
 そうして白雲(シユク)さんはこの料理に疑問を抱かないのだろうか……
 不思議でしょうがない。
 少しは疑問に思ってくれれば……
 そう思わないでもない。
 だが、結論は出た。
 白雲(シユク)さんの料理は俺の力ではどうにも出来ないという事。
 そして、諦めざるを得ないという事。
 ホント…………泣きたくなってきた。