死神の仕事を終えて識者の館に帰って来た。
 ――が、なんだかテラスの方からおどろおどろしい空気が漏れているのは……気のせいだろうか?
 少しテラスが気になったが、まあ、中にいる碧風(ヘキフ)様と白雲(シユク)さんに聞けばわかるだろう。
 そう軽い気持ちで帰った。

 ――が、暗い表情の碧風(ヘキフ)様と白雲(シユク)さん。
 一体何があったというのか?
「あ、あの……一体何が――?」
 こちらを向いた碧風(ヘキフ)様が溜息を吐いた。
「今、ね……銀生(カネユ)が来てるんだよ」
 そして理解する。
 ああ……銀生(カネユ)様……
 それならあのテラスの方から漂ってきた空気も理解できる。
「それは、以前にもありましたよね?」
 何か問題が?
「大ありだよ」
 わかってないなぁと言外に言われる。
「今の蒼氷(ソウヒ)は元気なんだよ」
「それは――」
 夜曇(ヤクモ)の封印の影響もなくなってきている。
 元気だろう。
銀生(カネユ)を拒む理由がなくなってるんだよ」
 ……………………
「それって……」
「だからいつも以上にエスカレートしててさぁ……」
 見てくれば解ると背中を押された。
 白雲(シユク)さんでさえ顔色が悪いあの二人の様子を見に行けと言うことか――
 かなり、気は進まなかったが仕方がない。
 意を決してテラスに向かった。




 蒼氷(ソウヒ)銀生(カネユ)様が二人揃ってニコニコ笑っていた。

 だが、笑顔がこんなに怖いものだとは思わなかった。
 近づけないオーラが――

「いい加減に観念してください」
「嫌だね」
「アナタは知識と生命の神です。統括神をしていただきます」
「嫌だよ。面倒だもん」
「新しい部署も考えています」
「そんなのわざわざ創らないでよ」
「いえ、そういうわけにはいきません」
「いくよ」
「いきません」

 そんな言葉の応酬を繰り返していた。

 青い空の下で不毛な言い争い――
 しかもあの場は極寒ブリザード状態だ。
 二人の顔色が悪かったのも頷ける。