「はぁ……」
 背が縮んでからどれ位経っただろうか?
 忌々しい……
 背が縮んだイコール力を失った期間なんだけど……
 一人でいると気にならないんだけど……
 今ここにはもう一人いる。
緋燿(ヒヨウ)ってさ、身長いくつ?」
 緋燿(ヒヨウ)をじっと見ながら尋ねる。
「175cmですけど?」
 へぇ……175……――
「僕はね、140cmなんだよね」
 ……そう夜曇(ヤクモ)のせいで――
 そう思うだけで腹立たしい……
 僕はヤツのせいで縮んだ。
「何?」
 こちらをじっと見て来る緋燿(ヒヨウ)
 ロクなことを考えてなさそうな顔だ。
「いえ、小さいなと――」
 ああ、やっぱり――
 ばきぃ!!
 あまりにも腹立たしくてついうっかりテーブルを破壊してしまった。
 こんなことで無駄に力を使うなんてと思うが、ムカつくのでしょうがない。
 しかたのないことだとわかっていても、自分で納得した上でしたことであろうとも、やはり不便だ。
 どんなに時間が経とうとも……
「何か言ったかな?」
 緋燿(ヒヨウ)が硬まっている。
 それはそうだろう。
 うっかりテーブルを粉砕してしまったし――
「ふふふ……」
 ああ、でもやっぱり我慢できない。
「僕はねぇ……見下ろされるの嫌いなんだよね」
 こんなことで無駄に神術なんて使うものじゃないのに――
 わかっているのに……
 それほど僕はまだ元気じゃない……
 でも――
《汝に求めしは忘却の姿》
 ――ついやってしまった。
 そこにいるのは僕とたいして変わらないくらいに縮んだ緋燿(ヒヨウ)の姿。
 最初、何が起こったのかわからなかったようだが、すぐに気づいた。
 自分の異変に――
「その通りだよ、緋燿(ヒヨウ)
 大人げないことをしていることはわかっている。
 わかっているのだが……
「そこまで縮めば僕のことも見下ろせまい」
 僕はそう言って緋燿(ヒヨウ)の前から去った。