はぁ……
 たとえ特異点に建っていたとしても所詮は建物。
 老朽化には勝てないということか……
 そう思いながら館の壁を少し離れた所から見ていた。
「あ、緋燿(ヒヨウ)
 すると緋燿(ヒヨウ)が飛んで来た。
「どうかしたのか?」
「うん……あれ見て」
 僕は見ていた館の壁を差した。
 差された方向をじっと見つめる緋燿(ヒヨウ)
 
「どれだ?」
「館の壁だよ」
 それ以外に見えないでしょ。
「壁?」
 僕に言われて改めて壁を見始めた。
 そして呟く。
「そうだな……強いて言えば老朽化が進んでる……か――」
 
 
「そう! そうなんだよ!!」
 
 
 そう力強く僕が返事をすると、緋燿(ヒヨウ)は何故か僕から一歩引いた。
 気にすることなく僕は続ける。
 
「僕がここに来てから一度も何もしてないし……汚れも白壁だから物凄く目立つし……そもそも建物に罅が入ってるんだからなんとかしないといけないなって思ってたんだよ」
 
 地震なんか起こらないけど、万が一崩れたりしたら洒落にならない。
 
「だから白雲(シユク)と二人で外壁修繕して」
 
 放置するわけにもいかない。
「僕が〈復元の光〉を使えたらわざわざ緋燿(ヒヨウ)白雲(シユク)に頼んだりしなくても良かったんだけど…………今使えないからね」
 ああ、忌々しい。
 思い出しただけで気分が悪くなる。
「し…………白雲(シユク)さんと……一緒…………に――?」
「当り前じゃない。確かに識者の館は狭いけど一人でやるのは大変だよ。だから白雲(シユク)にも手伝って貰わないとね」
 識者の館は狭い。
 でも、館というからにはそれなりの広さはある。
 いくらなんでもこれを独りでやらせるほど僕は鬼ではない。
「ちょ――」
 そうと決まれば善は急げ。
 
 
「じゃあ言ってくるね」
 僕は白雲(シユク)に伝えに行く。
 なんか後ろで緋燿(ヒヨウ)が何かを言っている気がするが、まぁ、いいだろう。
 僕の頭の中は壁の修繕でいっぱいだった。
 
 
 
 
 そして緋燿(ヒヨウ)白雲(シユク)は力を合わせて壁を修繕してくれた。
 二週間ほどかかった。
 広くはないとはいえ、やはりそれなりに面積はあるし手間がかかったのだろう。
 しかし、良い感じに仕上がった。
 二人には感謝だ。