――あの日……何が起こったのかわからなかった。
突然、魔物の咆哮と人々の悲鳴が聞こえた――
創生暦十六万九千四百四十五年、第二十一月[風の月]九日。
その日、
理由は水の中枢制御システムの
その為に
水の中枢制御システムの
現地に常駐していた神と共に水の中枢制御システムの
その為に
システムの
システムの
そんな時、空気が変わったような気がした。
ゾクリと寒気に襲われる。
とてもイヤな気配を感じた。
不安に思った
その時、悲鳴が聞こえた。
それも一人や二人じゃない。
悲鳴というよりも絶叫に近いそれは不安を煽った。
そして聞こえる咆哮――
それは紛れもなく、魔物のものだった。
「何!?」
そこから見えたのはたくさんの魔物と戦っている天使たち。
だが、数の所為もあるのか天使たちが押されている。
元々、水属性の神や天使たちは攻撃力が低い。皆、温厚なのでいつでも平和な場所なのだ。
だから天使たちが圧倒的に不利だった。
それに水の力は攻撃より補助的なものの方が多い。
どうしてこんな事に……
ばんっ!!
「
突然扉を蹴り飛ばすような勢いで中に入って来たのは、水の最高神である
そして
「良かった、ご無事でしたね」
その言葉に対して、
「良くないよ! だって、皆が――」
その声を制し、
「な、何これ?」
「気休めにしかなりませんが……これで少しは誤魔化せるはずです」
「誤魔化せる?」
戸惑いを見せる
「魔物だけではなく、魔族も入り込んでいます」
その言葉に衝撃を受ける
魔族と戦う力はこの
「魔族の狙いは恐らく…………貴方です。
その言葉に衝撃を受ける
「…………う……嘘…………――」
よろよろと窓を見る
戦っていた天使たち。
いや、あれは戦っているとはいえない。一方的な殺戮だ。
その天使たちは自分の所為でこんな酷い目に遭っている。
そう思うと苦しかった。
「
誰もいない廊下を走る二人。
「逃げるんですよ。ここにいては危険です」
「逃げる? 皆を見捨てて?」
「当たり前です!!」
戸惑う
「僕だけ逃げるなんて――」
「そんな事――」
「貴方が逃げなかったら、皆が命を張って足止めしてくれた意味がなくなります」
解ってください、そう言って
「でも、僕のために――」
ミンナガシヌ――――
「い、いや! そんな事……そんな事出来な――」
ずっと
だが、それでも――
「申し訳ありませんが、それは出来ません。
「――!?――」
「そんな……そんな事言わないで…………そんな悲しい事、言わないでよ――――
そんな言葉、
「…………それが私の使命です。貴方をお護りする事が。
それに、貴方に万が一の事があればこの世界はどうなりますか?」
「それは――」
自分が死に、制御システムが破壊されれば現世はおろか、それに連なる世界の崩壊に繋がるという事……
そんな事は解っていた。
でも、解っていても…………心は悲鳴を上げる。
見捨てないで、と――
「貴方は優しすぎます。ご理解くださいとは言いません。ですが、どうか堪えてください」
そう言うと、
生き残る為に――
そして
そこはこの
そこには鏡が安置されていた。
「?
訳がわからず、困惑する
そんな
「この鏡は力を封印する事が出来るといわれています。これを使い、少しでも魔族の目を潜り抜けましょう」
「
「私一人では何時まで貴方を護りきれるか判りません」
その言葉に
「
沈黙は肯定――
そんな事、言われなくても解る…………
それでも、イヤだった――
目の前で誰かが死んでいくのは――
独りにされるのは――
…………堪らなく怖い――
知らないうちに
「申し訳ありません」
そう言って鏡を
そんな謝罪の言葉なんか聞きたくないと
だが――鏡から溢れ出した光が、力が、
身体が言う事を利かない。
そして、徐々に光は治まっていった。
まず、目線が低い。
そして、何故かだぼだぼの……服。
何が起きたのか解っていない
「――――これは鏡を使用した副作用といった所ですか……」
そして
自分の背が縮んでいるという事に――
そして、能力が全く使えない事に――
「ですが、好都合ですね。この姿なら、少しは誤魔化す事が出来ます」
見る者が見ればすぐに気付かれる。
それでも、少しの可能性があるならばと、
最愛の主を護る為に――
「
「行きましょう。大丈夫です。私が、何があってもお護りします」
その不安は、
それがわかっているからこその不安だった。
おそらく、
それが、どれほど非人道的な事でも――
そうする事で、
だから、不安だった。
怖かった――
これから見る光景が…………地獄絵図のようなものだと、わかっているから……
悲しいモノしか映らないから……
そんな
「時間がありません」
何時、ここにも彼らが来るか解らない。
だからこそ、逃げなければならない。
そして走り出そうとしたその時――
どしんっっ!!
――――物凄い震動が辺りを襲った。
カラン……
「制御システムにまで到達したのか!?」
もしかしたら、
「ここも危険です」
何としてでも、
その想いを秘めて――