「辿り着いたかしら?」
「逢えたでしょう。お二人は、とても仲良しだったから」
 シェインエルの言葉にアウインは頷いた。
「そうね……」
 庭を見ながら思う。
「少ししか逢えなかったのに、マナではなかったのに……寂しいのは何故でしょう?」
「そうねぇ……やはり、仲間だからかしら」
 見えなくても繋がりがある。
 それはとても強固なモノだと信じたい。
「だって……」
 言葉を切ったシェインエル。
 アウインはその表情を見て、自然に笑みが零れた。

「マナは帰って来てくれたわ」

 確かに、その通りだ。
 もう二度と逢えないのだと、思っていた。
 それなのに、逢うことが出来た。
 それは――

「アウイン! シェインエル!!」

 突如、物凄い勢いで女性が駆け寄って来た。
 後ろには長らく逢っていなかったシェインエルの兄、アーシェルトがいる。
「お兄様は!?」
 掴みかからん勢いの女性。
「あら、エーテルじゃない」
 彼女はマナの妹……物理を司る神、リビティナ=エーテル=フリュクレフ。
「お兄様がエーテルに教えたの?」
「ああ。偶然出逢ったんだよ」
「それで聞いたのよ。お兄様に……お兄様と同じヒトに出逢ったと!」
「……逢いに来たのね」
「勿論!」
 周囲を見回すが、それらしい気配も存在も感知できない。
「一足遅かったわねぇ……」
 それを聞いたエーテルは地面にへたり込んだ。

「お兄様……」

 もう一度会えると思った。
 しかし、すでに彼はここにいない。
「意外と早かったね」
「それはそうよ。マナだもの」
「そうね、マナだからね」
 それを聞いたエーテルは悔しそうに歯噛みした。
「ズルイ!!」
「ズルイ?」
「ズルイわ! 皆お兄様に逢って!」
 確かに、逢えていないのは実の妹であるエーテルだけだ。
「でも逢わなくて正解だったかもね」
「どうして!?」
 あっさりとそう言い放つアーシェルトに怒りがこみ上げて来た。
「だって、マナの記憶がない別の人。それでも君は喜べた?」
「それは逢えたから言える詭弁よ」
 そう怒鳴り、そして、涙を浮かべた。
「関係ないのよ……だって、姿が違くても、記憶がなくても、それはお兄様なのよ?」
 何一つ知っていることがなくても、その存在は確かにオルクス=マナなのだ。
「あなた達には理解できないでしょうけど……」
 どんな状態であろうとも、存在していてくれるだけで嬉しいのだ。
 それは失ったことのあるものにしか理解できない。
「エーテル……」
 そして思う。
「やはりマナは僕たちの中心だね」
「確かに……」
「マナがいるだけで皆集まるなんて――」
 こんなこと、もう長い間なかった。
 逢おうと思えばいつでも逢えるのに、そうしようとは思わなかった。
「きっと逢えるわ。だって、二人は兄妹だもの」
 その言葉に黙り込んだ。
 その言葉が信じられないわけではない。
 むしろ、信じたい。
 いや……信じなければ。
「お兄様……」
 エーテルはまだ見ぬ兄に逢えると、強く信じることにした。
 現実に、なるように――